反対咬合(受け口)のハーフリンガル矯正での治療
症例概要
本症例は、前歯部反対咬合(受け口)を主訴とする患者様に対し、ハーフリンガル矯正装置(上顎舌側・下顎唇側)を使用して治療を行いました。
両側AngleⅢ級臼歯関係を呈し、特に右側の下顎大臼歯の近心位が著しかったため、左右で異なる治療アプローチを採用しました。
右側は下顎第一小臼歯の抜歯により臼歯関係を改善し、左側は大臼歯の遠心移動により対応しました。
また、上顎臼歯幅径の狭窄に起因する臼歯部反対咬合に対しては、パラタルバーによる側方拡大を併用しました。
治療期間:1年8ヶ月

谷木院長による症例解説
患者情報と主訴
初診時年齢:26歳5ヶ月居住地:大阪市内
主訴:前歯部反対咬合(受け口)
診断と治療計画
診断所見
初診時の口腔内所見および頭部X線規格写真分析より、以下の所見が認められました。・前歯部反対咬合(受け口)
・両側AngleⅢ級臼歯関係(下顎大臼歯の近心位)
・右側臼歯関係の著しい前後的不調和(右下顎大臼歯の著明な近心位)
・上顎臼歯幅径の狭窄
・臼歯部反対咬合(交叉咬合)
治療方針
本症例の特徴は、左右で臼歯関係の不調和の程度が異なることです。右側は下顎大臼歯の近心位が特に著しく、大臼歯の遠心移動のみでは十分な改善が困難と判断されました。
そこで、左右で異なる治療戦略を立案いたしました。
右側:下顎第一小臼歯(4番)を抜歯し、抜歯スペースを利用して臼歯関係を改善
左側:非抜歯で下顎大臼歯を遠心移動し、臼歯関係を改善
上顎:パラタルバーを用いた側方拡大により、臼歯幅径を拡大し、臼歯部反対咬合を改善
このような左右非対称の治療計画により、効率的かつ確実な咬合改善を目指しました。
治療方法
抜歯部位
・下顎右側:第一小臼歯(4番)※左側は非抜歯、上顎も非抜歯
矯正装置
ハーフリンガル矯正装置を採用し、上顎は舌側矯正装置(リンガルブラケット)、下顎は唇側矯正装置(ラビアルブラケット)を使用しました。上顎臼歯部の側方拡大
上顎臼歯幅径の狭窄により臼歯部まで反対咬合を呈していたため、パラタルバー(口蓋に設置する拡大装置)を使用して上顎臼歯部の側方拡大を行いました。これにより、上下顎臼歯の適切な咬合関係を確立しました。
左右非対称の臼歯関係改善
右側は下顎第一小臼歯の抜歯スペースを利用して、下顎大臼歯を後方に移動させました。左側は下顎大臼歯の遠心移動により、Ⅲ級臼歯関係をⅠ級臼歯関係へと改善しました。
治療期間・通院頻度
総治療期間:1年8ヶ月通院頻度:月1回
リスクマネジメント
前歯部反対咬合を呈する患者様は、下顎前歯部の歯槽骨が薄い傾向があります。下顎前歯を後方移動する際、歯が過度に舌側傾斜したり、歯肉退縮が生じるリスクが高いため、慎重な治療計画と緻密な歯の移動コントロールが必要です。
本症例では、以下の対策を講じることで、これらのリスクを最小化しました。
・CT画像による歯槽骨幅径の精密計測:治療前にCT撮影を行い、下顎前歯部の歯槽骨の厚さを詳細に評価
・セットアップへのトルクコントロール組み込み:下顎前歯にクラウンラビアルトルク(歯冠を唇側に傾斜させる力)を事前にセットアップに組み込み、過度な舌側傾斜を防止
・歯根位置の継続的モニタリング:治療過程において、歯根が歯槽骨の範囲内に維持されているかを定期的に確認
・歯肉退縮の早期発見:歯肉の状態を継続的に観察し、退縮の兆候があれば治療計画を修正
これらの緻密な管理により、下顎前歯の適切な後方移動を達成し、歯槽骨や歯肉の健康を維持しながら治療を完了することができました。
治療結果
前歯部反対咬合は完全に改善され、適切な前歯被蓋関係が確立されました。両側の臼歯関係もⅠ級へと改善し、臼歯部反対咬合も解消されました。
下顎前歯部の歯槽骨および歯肉の状態も良好に保たれ、機能的かつ審美的に優れた咬合状態を獲得することができました。
患者様からも高い満足度をいただいております。
まとめ
本症例は、前歯部反対咬合と両側Ⅲ級臼歯関係を呈する成人症例であり、左右で臼歯関係の不調和の程度が異なるという特徴がありました。このような症例では、左右で異なる治療アプローチを採用することで、効率的な咬合改善が可能となります。
また、反対咬合症例特有のリスクである下顎前歯部歯槽骨の菲薄化に対しては、CT画像による精密診断とセットアップへのトルクコントロール組み込みにより、安全かつ確実な治療を実現しました。
上顎臼歯部の側方拡大も併用することで、三次元的に良好な咬合関係を確立できた症例です。
費用
総額:143万円(税込)
※分割払いをご利用いただけます(月々14,614円より)
※分割払いをご利用いただけます(月々14,614円より)