インビザラインだけで治る?それとも裏側矯正?両方の専門医が提案する「いいとこ取り」のコンビネーション治療とは

こんにちは。大阪市北区の医療法人梅田リンガル矯正歯科医院 大阪オルソです。
矯正治療を考え始めたとき、多くの女性が最初に悩むのが「装置選び」ではないでしょうか。
「透明で目立たないインビザライン(マウスピース矯正)に惹かれるけど、本当に私の歯並びでも治るのかな?」
「裏側矯正(ワイヤー矯正)の方が確実に治ると聞いたけど、費用や違和感が心配……」
ネットで調べれば調べるほど、それぞれのメリット・デメリットが出てきて、「結局、私にはどっちがいいの?」と迷子になってしまう方も少なくありません。
実は、当院が出す答えは「どちらか一つを選ばなくてもいい」です。
今回は、インビザラインと裏側矯正、両方の専門知識を持つ当院だからこそ提案できる、最強の「いいとこ取り」治療法=「コンビネーション治療」についてご紹介します。
目次
1. 「インビザライン」と「裏側矯正」それぞれの得意・不得意

まず知っていただきたいのは、どの矯正装置も「魔法の道具」ではないということです。それぞれに、明確な得意分野と苦手分野があります。
1-1. インビザライン(マウスピース矯正)
得意:
- 目立たない、取り外しができる。
- 歯を外側に広げたり、奥歯を後ろに送ったりする動き。
苦手:
- 大きく乱れた歯並びを大きく動かすこと。
- 抜歯をして大きなスペースを埋める動き。
- 歯のねじれを細かく修正すること。
1-2. 裏側矯正(ワイヤー矯正)
得意:
- 大きくガタついた歯並びを整えること。
- 抜歯スペースを閉じるような、ダイナミックな移動。
- 歯の根っこからの細かいコントロール。
苦手(デメリット):
- 慣れるまで喋りにくさを感じることがある。
- 食事の時に装置に物が挟まりやすい。
1-3. 「マウスピース矯正」と「裏側矯正」の比較に関する論文
マウスピース矯正が得意な歯の動き
1. 拡大(歯列を横に広げる動き)
マウスピース矯正では拡大が高い予測性を示し、第二大臼歯を除く歯で達成率63-88%(上顎)、87-88%(下顎)と報告されています。
2. 上顎臼歯の遠心移動(後方移動)
上顎臼歯の段階的遠心移動は約87%の達成率を示し、2-3mmの移動が可能です。
3. 前歯部開咬の改善
2mm未満の開咬症例は、マウスピース矯正での前歯の挺出と臼歯の圧下による治療に適していることが示されています。
マウスピース矯正が苦手な歯の動き
1. 過蓋咬合(深い噛み合わせ)の改善
深い噛み合わせの改善は予測実現性が低く(非抜歯症例で33-46%、抜歯症例ではわずか8.7%の達成率)、マウスピース矯正には不利と考えられています。
2. 前歯の圧下
前歯の絶対的圧下は達成率26-48%と非常に困難です。
3. トルクコントロール
前歯の歯根のトルクコントロールは低予測実現性で、全体で35%、中切歯で21%、側切歯で15%の達成率です。
4. 回転(特に犬歯と小臼歯)
円形の形をした犬歯や小臼歯の回転は、平均で46%程度の予測実現性しかありません。
舌側矯正が得意な歯の動き
1. 過蓋咬合(深い噛み合わせ)の改善
舌側矯正はバイトプレーン効果で過蓋咬合を改善する効率的な能力が知られています。中等度以上の過蓋咬合は、前歯を圧下し後方歯を挺出する舌側矯正で効率的に改善されます。
2. 下顎前歯の圧下
表側矯正と裏側矯正の比較研究では、舌側グループで下顎前歯が1mm圧下されたのに対し、唇側グループでは微量の挺出(0.3mm)が見られました。舌側矯正では、下顎前歯が上顎前歯の舌側ブラケットに接触することで圧下され、自然な咬合挙上が起こります。
舌側矯正による過蓋咬合改善の主要な要素は、順に、下顎前歯の圧下、下顎大臼歯の挺出、上顎大臼歯のわずかな挺出、上顎前歯の安定性です。
3. 前歯の唇側傾斜の抑制
表側矯正と裏側矯正の比較研究では上顎前歯の唇側傾斜は表側矯正で有意に高くなりました。つまり、裏側矯正では前歯の過度な唇側傾斜を抑制できます。
舌側矯正装置は、固定源の喪失が比較的少なく、前歯のトルクコントロールに優れています(舌側矯正は唇側装置よりも前歯を舌側傾斜させる傾向があります)。
4. 固定源のコントロール
舌側固定装置は、犬歯間幅径のコントロールが優れており(マウスピース治療ではIPRが必須になることが多いのに対し、IPRの必要性が少ない)、抜歯矯正ではスペース閉鎖中の後方セグメント固定源の喪失(大臼歯の近心移動)が少なくなります。
5. 圧下と挺出における優位性
舌側装置を使用した歯の圧下と挺出は、装置と歯の抵抗中心(歯に力がかかる際の仮想の歯の重心)への垂直距離が短いため、表側装置と比較して全体的に副作用の傾斜が少なくなります。
舌側矯正が苦手な歯の動き・症例
1. トルクコントロールの複雑さ
舌側矯正では前歯のトルクコントロールが重要な課題とされています。
同じ大きさの荷重が、唇側矯正では上顎前歯の平行移動を生じさせましたが、舌側矯正では同じ歯の舌側歯冠傾斜を生じさせました。これは、抜歯患者における後退中の上顎前歯のトルクコントロールの喪失が、舌側矯正治療でより起こりやすいことを示唆しています。
舌側装置は唇側装置よりも大きな程度に舌側歯冠トルクを加えることで切歯を傾斜させる傾向があります。しかし、いったん舌側歯冠傾斜が起これば、唇側矯正よりも舌側矯正で修正することがはるかに困難です。
2. 外科的矯正症例
外科的矯正症例は、矯正管理の複雑さと手術中の顎間固定を達成する困難さのため、舌側装置での治療が本質的に困難です。
ハイブリッドアプローチの利点
近年、両者の長所を活かしたハイブリッド治療が注目されています。
マウスピースと舌側固定装置を組み合わせることで、マウスピースの限界を補い、舌側装置の生体力学的利点を活用できます。マウスピースは咬合挙上時に快適性、実用性、優れた口腔衛生を提供し、より小さな動きはマウスピースで簡単に達成できます。一方、舌側固定装置は、より複雑な回転とトルクコントロールに使用されます。
まとめ比較表
| 歯の動き/特徴 | マウスピース矯正(達成率) | 舌側矯正 |
|---|---|---|
| 過蓋咬合の改善 | 苦手(33-46%) | 得意(効率的な圧下と咬合挙上) |
| 前歯の圧下 | 苦手(26-48%) | 得意(特に下顎前歯、傾斜が少ない) |
| 拡大 | 得意(63-88%) | 可能(バイオメカニクス的利点あり) |
| 遠心移動 | 得意(87%) | 可能 |
| トルクコントロール | 苦手(21-35%) | 複雑(舌側傾斜が起こりやすい) |
| 回転(犬歯・小臼歯) | 苦手(46%) | 可能 |
| 前歯唇側傾斜の抑制 | 困難 | 得意 |
| 固定源のコントロール | 課題あり | 優れている |
| 前歯部開咬の改善 | 得意 | 対応可能 |
| 抵抗中心との位置関係 | 歯冠の外側から力が作用 | 抵抗中心に近い位置から作用 |
| 力の作用点の特徴 | 歯全体を覆う | 歯肉側に位置し垂直コントロールに有利 |
臨床的な選択基準
マウスピース矯正が適している症例
- 軽度から中等度の叢生(拡大で対応可能)
- 前歯部開咬(2mm未満)
- 上顎臼歯の遠心移動が必要なII級症例
- 比較的シンプルな歯の動きが主体の症例
舌側矯正が適している症例
- 過蓋咬合の改善が必要な症例
- 前歯の圧下が必要な症例
- 前歯の唇側傾斜を厳密にコントロールしたい症例
- 固定源のコントロールが重要な症例
- 複雑なトルクコントロールが可能な装置が必要な症例
どちらも注意が必要な症例
- 大きな抜歯スペースの閉鎖
- 複雑な3次元的な歯の移動
- 外科的矯正を伴う症例
結論
マウスピース矯正と舌側矯正は、それぞれ異なるバイオメカニクスの特性を持ち、得意とする歯の動きが異なります。
マウスピース矯正は拡大や遠心移動が得意で、比較的シンプルな動きに適していますが、圧下やトルクコントロール、過蓋咬合の改善には限界があります。
舌側矯正は過蓋咬合の改善、前歯の圧下、唇側傾斜の抑制に優れていますが、力の作用点が抵抗中心に近いため、意図しない舌側歯冠傾斜が起こりやすく、適切なバイオメカニクスの理解と調整が必要です。
近年では、両者の長所を活かしたハイブリッドアプローチも選択肢の一つとなっており、症例に応じた適切な治療法の選択が重要です。
出典
- Naoum, S., & Lee, R. (2025). The predictability of tooth movement with clear aligner systems. Seminars in Orthodontics. https://doi.org/10.1053/j.sodo.2025.06.003
- Kaya, B., Uyar, R., & Tunca, M. (2019). A comparison of treatment results of adult deep-bite cases treated with lingual and labial fixed appliances. Turkish Journal of Orthodontics, 32(1), 1-7. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8376167/
- Isola, G., Matarese, M., Alibrandi, A., Dalessandri, D., Migliorati, M., & Pedullà, E. (2024). Hybrid Orthodontics for Aesthetic Deep Bite Correction. Applied Sciences, 4(2), 11. https://www.mdpi.com/2673-6373/4/2/11
- Liang, W., Rong, Q., Lin, J., & Xu, B. (2009). Torque control of the maxillary incisors in lingual and labial orthodontics: A 3-dimensional finite element analysis. American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics, 135(3), 316-322. https://doi.org/10.1016/j.ajodo.2007.03.039
- Lombardo, L., & Siciliani, G. (2018). Biomechanics in lingual orthodontics: What the future holds. Seminars in Orthodontics, 24(3). https://doi.org/10.1053/j.sodo.2018.08.008
- Papageorgiou, S. N., et al. (2017). Lingual vs. labial fixed orthodontic appliances: systematic review and meta-analysis of treatment effects. European Journal of Orthodontics. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5700487/
2. 迷ったら「いいとこ取り」!コンビネーション治療とは?

そこでおすすめなのが、上記論文でも推奨されている2つの装置を治療のフェーズ(段階)によって使い分ける「コンビネーション治療」です。
2-1. コンビネーション治療の仕組み
一般的には、以下のような流れで行います。
非抜歯矯正の場合
- まずマウスピース矯正を開始する前に、上顎側切歯反対咬合、小臼歯捻転などの改善を「裏側矯正」で行います。マウスピース矯正では苦手な歯の動きをワイヤーの力を借りることで、効率的に歯を移動させます。
- ある程度歯並びが整ってきたら装置を外し、「インビザライン」に切り替えます。残りの微調整や仕上げを行い、快適にゴールを目指します。
抜歯矯正の場合
- 最初にマウスピース矯正を開始し、抜歯スペースを閉じます。
- 副作用で抜歯窩の隣在歯が傾斜するので、部分的にワイヤーを用いて傾斜を改善します。
- その後再度マウスピース矯正に戻して最終仕上げを行います。
2-2. 【メリット1】治療期間の短縮が期待できる
それぞれの装置が「一番得意な仕事」をする期間だけを担当するため、無駄な動きが減り、結果としてトータルの治療期間を短縮できるケースが多くあります。
2-3. 【メリット2】仕上がりの美しさを妥協しない
「インビザラインだけでは治りきらないかも」と言われるような難症例の方でも、裏側矯正を行うことで、妥協のない美しい歯並びを目指すことができます。
2-4. 【メリット3】苦手な期間を短くしてストレス軽減
「ずっとワイヤーがついているのはしんどい…」という方も、期間が半分程度になれば頑張れるはずです。仕上げは取り外せるマウスピースになるため、精神的・身体的な負担も大きく軽減されます。
3. なぜ「両方の専門医」である必要があるのか?
このコンビネーション治療を成功させるためには、ドクターが「裏側矯正」と「マウスピース矯正」、両方の技術に精通していることが絶対条件です。
もし、マウスピース矯正しかやっていない医院に行けば「マウスピースだけで治せます」と言うしかありません。
逆に、ワイヤー矯正しかできない医院では、ワイヤーを勧められるでしょう。
当院は、裏側矯正の専門医資格を持ち、かつインビザラインの豊富な実績も持つ「二刀流」のクリニックです。
どちらかの装置に固執することなく、患者様の歯並びにとって「本当に最短でキレイになる方法は何か」をフラットな目線で診断し、ベストな組み合わせをご提案できます。
4. まとめ:あなたのライフスタイルと歯並びに、ベストな組み合わせを

「ワイヤーか、マウスピースか」 その二択で悩む必要はありません。
それぞれの良いところを組み合わせた「コンビネーション治療」なら、あなたの理想の歯並びへの道のりは、もっと確実で、もっと快適なものになるはずです。
「私の歯並びは、どっちが向いているの?」
「組み合わせると費用はどうなるの?」
そんな疑問をお持ちの方は、ぜひ一度カウンセリングにお越しください。あなただけのオーダーメイドな治療計画をお作りします。
医療法人梅田リンガル矯正歯科医院 大阪オルソ
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