上下とも歯が大きい場合や小さい場合には特に問題はありませんが、一部の歯だけ極端に大きかったり小さかったりする場合には上下の歯がしっかりと噛み合わない原因となります。
そこで当院のような歯列矯正専門医院では歯を並べる前に歯の幅を計測し、歯を綺麗に並べた際に上下の歯が噛み合うかどうかを分析しています。上下の歯の大きさのバランスを調べる分析方法をボルトン分析といいます。
ボルトン分析とは
ボルトン分析は模型分析の一種で1959年にワシントン大学のボルトン先生によって考案された分析方法です。歯列模型にノギスをあてて歯の幅径(はば)を1本1本計測します。
上あごの歯12本の幅の合計と下あごの歯12本の幅の合計の比率を計算する方法と、上あごの前歯6本の幅の合計と下あごの前歯6本の幅の合計の比率を計算する方法があります。下あごの歯の幅の合計値を上あごの歯の幅の合計値で割った商をみて、上下の歯が噛み合うかどうかを判断します。噛み合わせが正常な場合には一定の比率になることが知られおり、この正常咬合の比率と患者さんの模型分析から得られた比率を比較すれば歯を並べたとき上下の歯が正常に噛み合うかどうかが分かります。
計算方法
日本人の標準値
オーバーオールレシオ 91.37±2.10
アンテリアレシオ 78.09±2.19
計算結果からわかること
標準値と比率が大きく異なる場合には歯を綺麗に並べたときに上下の歯が噛み合いません。歯を段差なく綺麗に整頓し、奥歯を1級(前後的に正しい位置)で噛み合わせた場合、分析結果が標準値より極端に小さい場合には前歯は出っ歯になり、大きい場合には受け口になります。模型分析をしていなければ歯を綺麗に並べた後に前歯の被蓋を修正するとなると治療期間が大幅に延びてしまいます。したがって治療を始める前にボルトン分析を行うことで重要なのです。
比率と標準値が異なる場合の対策
上下の歯の比率が標準値と大きく異なる場合には歯の大きさのバランスを整える必要があります。例えば生まれつき小さい2番目の歯を被せもので大きくしたり、大き過ぎる歯を歯に影響がない範囲で削って小さくしたりします。治療前にこれらの処置をあらかじめ計画しておくと治療をスムーズに行うことができます。
まとめ
歯並びの治療は歯を綺麗に整頓するだけではなく、噛み合わせや歯に負担のかからない位置や角度を考慮に入れた診断を行う必要があります。治療を始める前にセファロ分析や模型分析などを行い、綿密な治療計画を立てることで、治療期間を短縮できることはもちろんのこと歯の負担を減らしたり、術後の安定性を高めたりすることが可能なのです。