前歯が大きくて目立ってしまうという悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか?もし本当に上の前歯だけが大き過ぎると、見た目の問題もありますが噛み合わせに影響することもあるので注意が必要です。しかしながら実際には前歯が極端に大きいということは少なく、歯の大きさ自体は平均的で、他の要因から歯が大きく見えてしまうといったことがほとんどです。そこで今回は前歯の平均的な大きさと、前歯が大きくみえる原因について書いてみたいと思います。
模型分析
多くの専門医院では、治療計画を立てる際に「模型分析」を行っています。模型分析とは患者さんの歯型から作った石膏模型を計測し、分析することです。計測するのは歯1本1本の大きさ、歯列弓(歯列の描く曲線)の長さと奥行きや幅、歯槽基底(歯茎が最も深くなっている部分)の奥行きと幅などです。これらを分析することで様々なことが分かります。例えば前歯が大きいかどうかということは平均値と比較することですぐに分かります。また1本1本の歯の幅全てを合計したものと歯列弓の長さを比較すれば歯を並べるために抜歯が必要かどうかが判断できます。その他に歯の大きさは上下のバランスも重要で、上下の歯の大きさのバランスが悪い場合には歯を綺麗に並べても上下の歯をしっかりと噛み合わせることができません。歯を並べる前にこれらの問題点を知っておくことで、より適切な治療計画をたてることができるのです。
上顎1番幅径平均値
女性の上あごの中切歯(前から1番目の歯)の幅の平均は8.24mmです。ここから±0.41mmの大きさであれば平均的な大きさだと言えます。もし前歯が平均的な大きさであるにもかかわらず大きいと感じる場合には他になんらかの原因があるということになります。
上の前歯が大きく見える原因
歯が大きく見える原因の中で最も多いのが上の前歯が前方にあるという場合です。この中には①上あごの骨が大きい②下あごの骨が小さい③上下とも顎の骨が大きい④骨の大きさは正常で歯だけが前方にある、というような種々の状態があります。原因や年齢に応じて適切な治療が必要となります。
その他の原因には側切歯(前から2番目の歯)が小さいということがあります。側切歯は生まれつき小さかったり元々なかったりすることが多い歯で、側切歯が小さい場合には隣にある中切歯(前から1番目の歯)が相対的に大きく見えてしまいます。側切歯が極端に小さいケースでは、上下の歯を綺麗に並べると受け口になる場合があるので必要に応じて矯正治療と合わせて側切歯を大きくする補綴治療が必要となります。
治療法
本当に上あごの1番目の歯が大きい場合には歯の横を歯に影響のない範囲で削って歯の幅を調整します。隣の側切歯が極端に小さいケースでは、上下の歯を綺麗に並べると受け口になる場合があるので必要に応じて矯正治療と合わせて側切歯を大きくする補綴治療が必要となります。また歯の大きさに問題がない場合には歯の位置関係を整える矯正治療を行います。
まとめ
このように前歯が大きく見えるという状態にはいくつかの原因があり、その原因に応じた適切な処置が必要です。当院ではデジタルデータを用いた模型分析を行い、適切な治療方法をご提案しています。