矯正治療をより効果的に進めていくために、アンカースクリューとよばれる補助装置を使用することがあります。あまり聞きなれないものなので何のために使用するのか、使用することでどのようなメリットがあるのか、など分からないことも多いのではないでしょうか。
今回の記事では、アンカースクリューとはどのような装置なのかはもちろんのこと、使用する場面やメリット、注意点なども詳しくご紹介します。
目次
矯正治療で使われるアンカースクリューとは?
アンカースクリューとは、歯列矯正用のインプラントのことです。インプラントと聞くと歯が抜けてしまった部分を補うための治療をイメージなさる方も多いかもしれませんが、インプラントという用語自体はそもそも体内に埋め込む医療機器全般を指します。アンカースクリューを使用した矯正治療のことを「インプラント矯正」とよぶこともあります。
アンカースクリューは小さなネジのような形をしたもので、顎の骨に直接埋め込みます。アンカースクリューの太さは1.4mm~2mm、長さは6mm~12mm程度でいくつか種類があり、粘膜の厚さや骨の状態によって使い分けていきます。
アンカースクリューを使用する場面
アンカースクリューを使用するのはあくまで矯正治療中のみで、必要な期間が終了したら撤去します。使用する期間は人によって様々です。撤去してすぐはアンカースクリューが入っていた部分は穴があいた状態になっていますが、粘膜の傷は2,3日で治癒することがほとんどです。顎の骨についても、約1ヶ月ほどで穴が綺麗に埋まります。
①複数の歯を同時に動かしたいとき
矯正治療において、複数の歯を一度に動かすのは難しいことです。裏側矯正は比較的歯を後方に動かすのが得意ではありますが、ブラケットとワイヤーだけでは時間がかかってしまうことがあります。アンカースクリューを併用することで効率よく歯を後方に移動させ、治療期間が大幅に短縮できる可能性が生まれます。
②起こってほしくない歯の動きを防ぎたいとき
矯正治療で歯が動くのには作用と反作用があるため、治療を進めていく中で本来であれば起こってほしくない歯の動きが生じてしまうこともゼロではありません。アンカースクリューを用いることで動かしたくない歯の動きを制御します。
アンカースクリューに関するよくある質問
アンカースクリューは一般的な歯科治療ではあまり聞きなれない言葉なので、不安や気になる点がある方も多いかもしれません。アンカースクリューに関するよくある質問をまとめましたので、参考にしてみてください。
①アンカースクリューを入れるときの痛みはどのくらい?
アンカースクリューは顎の骨に直接埋め込むものなので、当然ながら処置の前には麻酔をします。麻酔をしていれば、アンカースクリューを埋め込む際の痛みはほとんどありません。埋め込む時間も約5分ほどです。処置後の痛みや腫れもほとんどありません。
②裏側矯正をする人全員が使用する?
アンカースクリューは裏側矯正をする人全員に必要になるものではありません。アンカースクリューを併用したほうがメリットを得られる場合に、歯並びや噛み合わせの状態に合わせて歯科医師が検討します。
③アンカースクリューはどのような素材でできている?
アンカースクリューの多くはチタンやチタン合金でできています。チタンは歯科用インプラントをはじめとする様々な医療機器に使われている素材で、生体親和性が高く金属アレルギーの心配も比較的少ないことが特徴です。安心してご使用ください。
裏側矯正でアンカースクリューを使用するメリット
裏側矯正でアンカースクリューを併用するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
①歯を抜かずに済むこともある
これまでは抜歯をしないと治療ができなかったようなケースでも、アンカースクリューを併用することで歯を抜かずに治療を進められることもあります。また、下顎の大臼歯は矯正治療で動かすのが難しい歯ではありますが、アンカースクリューを用いて後方移動させることで、これまでよりも治療の可能性が広がります。
②顎外固定装置を使用せずに済む
これまで歯を後方に移動させる際には、奥歯を支点として力をかける「ヘッドギア」とよばれるヘルメットのような装置(顎外固定装置)を使用する必要がありました。この装置は頭に装置をつけるため見た目が非常に目立つという点や、奥歯は他のはに比べれば動きにくいものの支点とするには不十分であるという点などの課題があります。アンカースクリューであればこれらの課題を解決し、歯を精密に動かすことが可能となります。
アンカースクリューを使用した際の注意点
アンカースクリューを併用することはメリットも多い方法ですが、気をつけなければならない点もあります。
①ごく稀に脱落することがある
アンカースクリューが歯科用インプラントと大きく異なる点は、顎の骨に直接結合しないという点です。治療後に撤去することを前提として顎の骨に埋め込んでいます。そのため稀ではありますが、顎の骨の調度が不十分な場合やアンカースクリューの周囲に炎症が起こってしまった場合、治療途中でアンカースクリューが抜けてしまうことがあります。脱落してしまった場合は、別の場所に再度アンカースクリューを埋め込みます。
②お口の中が清潔に保たれていないと感染を起こすことがある
アンカースクリューのネジの部分は顎の骨に埋まっていますが、頭の部分はお口の中に飛び出したままになります。そのためアンカースクリューの周囲も丁寧に歯磨きをしないと、汚れが溜まって炎症や感染の原因となるおそれがあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、裏側矯正で使用されるアンカースクリューとはどのような装置なのか、使用するメリットや注意点についても詳しく解説しました。アンカースクリューは矯正治療を行う上で適宜必要になる補助処置の一つですが、治療効率の向上と安全性が両立されているものです。もしご不安やご不明点がある場合は、遠慮なくお話しください。
当院にはヨーロッパ・世界舌側矯正歯科学会認定医が在籍しており、豊富な経験と精密なデジタルデータをもとに診断や装置の作製を行っています。裏側矯正での治療をご希望の方は、お気軽にご相談ください。