矯正治療は、歯科医師と患者さんの「二人三脚」です
今回は、矯正治療における「顎間ゴム」と「リテーナー」についてご説明したいと思います。
私の恩師は、治療を始める患者さん全員に「矯正歯科治療は二人三脚です」ということを必ず伝えていました。これは、医師だけが頑張っても、あるいは患者さんだけが頑張っても、治療は決してうまくいかない、という意味です。医師による的確な治療計画や調整に加えて、患者さんご自身の協力があってこそ、理想的なゴールにたどり着けます。そして、患者さんにお願いするご協力の中で、特に重要なのがこの「顎間ゴム」と「リテーナー」なのです。
① 噛み合わせの”仕上げ”に欠かせない「顎間ゴム」
顎間ゴムとは、上の歯と下の歯に、患者さんご自身で専用の小さな輪ゴムをかけていただく処置のことです。顎間ゴムを適切に使用することで、上下の歯をしっかりと噛み合わせたり、歯を前後に動かしたりといった、ワイヤーだけでは難しい微調整が可能になります。長時間ご使用いただければ、治療期間の短縮や、より良い治療結果に繋がります。
食事や歯磨きの際には外す必要があり、お仕事によっては日中も外していただくなど、多少の煩わしさを感じるかもしれません。しかし、ゴムの使用時間が短くなってしまうと、治療期間が延びたり、噛み合わせがなかなか安定しなかったりする原因になります。上下の歯の位置関係を最終的に整えるためには、患者さんのご協力が不可欠なのです。
② キレイな歯並びを”維持する”ための「リテーナー」
リテーナーとは、治療終了後に歯並びを維持し、後戻りを防ぐための装置(保定装置)です。歯を動かす期間が終わると「治療がすべて終了した」と思われがちですが、動かした歯をその位置で安定させる「保定期間」も、治療の非常に大切な一部です。
個人差はありますが、歯の位置が完全に安定するには約2年かかると言われています。その間、歯が元の位置に戻ってしまわないよう、リテーナーを使用していただく必要があります。当院のリテーナーは目立たないタイプですが、顎間ゴムと同様、食事や歯磨きの際に取り外す手間がかかります。面倒に感じて使用時間が短くなると、せっかく綺麗に並んだ歯並びが崩れてしまうこともあるため、油断は禁物です。
美しい歯並びを、共に作り、守るために
このように、治療中や治療後には患者さんご自身にご協力いただく期間があります。理想的な歯並びを実現し、そしてそれを長く維持していくために、ぜひご協力いただけますと幸いです。
※顎間ゴムやリテーナーの使用にあたっては、まれに違和感や痛みを感じることがあります。使用方法については医師より丁寧にご説明いたします。