裏側矯正は歯を動かす治療である以上、多少の痛みをともないます。裏側矯正をはじめとした歯列矯正は、数年ほどかけて行う治療です。そのため現在痛みにお悩みの方は「この痛みがずっと続くのだろうか」「痛みを緩和する方法はないのか」といった不安を持っているのではないでしょうか。
そこで今回は、裏側矯正が痛いときの対処方法や原因、および痛みが続く期間の目安について解説します。裏側矯正の痛みが強くて困っている方はぜひお読みください。
目次
裏側矯正(舌側矯正)が痛いときの対処法5つ
裏側矯正(舌側矯正)をしている際に痛いと感じた場合は、以下5つの対処法を試してみることをおすすめします。
- 生理食塩水などで口をゆすぐ
- 柔らかいブラシで優しくブラッシング
- 痛み止めの薬を服用する
- ワックスでカバーする
- 担当の歯科医師に伝える
それぞれ、くわしく解説していきます。
①生理食塩水などで口をゆすぐ
1つ目の対処法は「生理食塩水などで口をゆすぐ」です。
生理食塩水とは、0.9%の塩化ナトリウムが含まれた水のことです。沸かした1リットルのお湯に9gの食塩を溶かすだけでできるため、自宅で簡単に作れます。洗口液をするのもいいでしょう。
矯正器具の刺激により歯茎や舌に炎症が起きている場合、また今まで歯茎に埋まっていた歯が出てきたばかりの場合には、冷たい生理食塩水が逆に刺激になるケースがあります。必ず、ぬるま湯の状態で口に含むようにしましょう。
②柔らかいブラシで優しくブラッシング
続いての対処法は「柔らかいブラシを使用する」です。
歯が動くと今まで歯茎に埋まっていた部分、歯同士が重なっていた部分が露出してきます。それらの歯の部分は刺激に慣れていないため、最初は毛が柔らかいブラシで歯磨きを行いましょう。毛先の硬い歯ブラシを使用するとさらに痛む場合があるため、ご注意ください。
③痛み止めの薬を服用する
続いての対処法は「痛み止めの薬を服用する」です。
裏側矯正による痛みを歯科医師に相談すれば、痛み止めの薬を処方してくれるでしょうう。歯科医院でもらえる薬だけでなく、頭痛などに効く市販の痛み止めでも問題ありません。
かつては、痛み止めの服用で歯の移動が阻害されるともいわれていましたが、実際には痛み止めの服用が歯の動きを阻害することはほとんどないことが分かっています。ただし、長期間の痛み止めの服用は胃腸や肝臓の負担もありますので、数回の服用であれば問題ありませんが、飲み過ぎには注意が必要です。
痛み止めを飲む前に、歯科医師に相談しておくとより安心できるでしょう。
④ワックスでカバーする
続いての対処法は「ワックスでカバーする」です。
矯正器具やワイヤーが口内で擦れて痛みを感じる場合は、矯正用のワックスをつけて保護しましょう。歯列矯正において用いるワックスは、粘土のような形状をしています。
指でワックスを適量ちぎって、器具やワイヤーを覆い隠すようにして貼り付けてください。ワックスで器具を覆うことで、装置の尖っている箇所が粘膜に当たらなくなり、痛みを防いでくれるようになります。
ワックスは基本的に蝋でできているため、熱い食べ物を食べると溶けてしまうことがあります。溶けたワックスを飲み込んでも人体に影響はありませんので、器具やワイヤーの刺激で再度痛みを引き起こすことがあれば付け直しが必要になります。
痛い思いをせず安心して熱いものを食べたい方は、溶けにくいシリコン製のワックスの使用をおすすめします。
ワックスは、歯列矯正を行う際に歯科医院からもらえる場合がほとんどです。もしもらえなかった場合は、歯列矯正を行っている医院にて購入可能です。
⑤担当の歯科医師に伝える
続いての対処法は「担当の歯科医師に伝える」です。
上記の対策で症状が痛みが緩和しない場合は、担当の歯科医師への相談をおすすめします。矯正器具のワイヤーが突き出していたり、ブラケットが外れていたりと、器具に不具合が起きているケースがあるためです。また、急性の歯肉炎や歯髄炎などの病気を引き起こしている可能性もあります。
上記のようなことが原因となっていた場合、患者さんだけでは対処できません。専門の歯科医師に対処してもらう必要があります。
器具に不具合があった場合は、医師によって器具の調整を行ってもらうことが可能です。また、歯肉炎や歯髄炎などの病気になっていた場合は治療を行ってもらえます。
器具の不具合や病気は、放置していても治りません。痛みが何日も続くようであれば、無理をせず歯科医師への相談をおすすめします。
裏側矯正(舌側矯正)で痛みを感じる原因5つ
裏側矯正をしているときに歯が動く痛み以外の痛みを感じる原因としては、以下の5つが考えられます。
- 歯茎に炎症が起きている
- 器具が口内を傷つけている
- 虫歯ができている
- 歯周炎が起こっている
- 歯髄炎を患っている
以下でくわしく解説していきます。
①歯茎に炎症が起きている
裏側矯正で痛みを感じる場合、歯茎に炎症が起きている可能性があります。
裏側矯正は表側矯正に比べて歯肉炎のリスクが大きいと言われています。
歯のブラッシングが不十分だと、歯に歯垢が残ります。歯垢が付着し続けると炎症を起こし、歯肉炎となってしまいます。
矯正器具の周りは歯を磨くことが難しくなるため、磨き残しが出てきやすくなります。炎症が起きていると感じた場合は丁寧なブラッシングを行いましょう。
自分のブラッシングだけでは不安という方は、歯医者で定期的なクリーニングを行ってもらうのもおすすめです。
②器具が口内を傷つけている
続いては、器具が口内を傷つけていることが原因として考えられます。
とくに裏側矯正を始めたばかりの頃は、器具が口内に当たって痛みを感じることがあります。裏側矯正の場合は舌側に器具を取り付けるため、舌に引っかかって傷ついてしまうこともあるでしょう。
器具が口内に当たることによる痛みは、歯列矯正を始めてから時間が経過するにつれ少しずつ引いてきます。口のなかの粘膜が刺激に慣れるためです。
③虫歯ができている
続いて考えられる原因は、虫歯ができているというものです。
虫歯の原因はさまざまですが、口内に磨き残しが多かったり、細菌が口のなかに多数あったりすることなどが挙げられます。矯正器具を装着していると、普段よりもしっかりとブラッシングするのが難しくなるため、虫歯を引き起こしやすくなります。
なお正しいメンテナンスを行えば、裏側矯正をしていても虫歯にはなりません。虫歯や重い病気にかかることなく矯正を終えるためにも、日頃から適切なブラッシングを心がけましょう。
④歯周炎が起こっている
続いては、歯周炎が起こっていることが原因だと考えられます。
歯周炎とは、歯肉炎が進行して、歯茎以外の部分まで炎症が広がって歯を支えている骨が溶ける病気です。歯周炎が進行すると、腫れや炎症、膿み、歯の揺れなどを引き起こします。
たまった歯垢や喫煙習慣、食習慣の乱れ、ストレスなど、歯周病の発症・進行原因はさまざまです。歯を失う原因ともなるため、いち早く治療を行う必要があります。
⑤歯髄炎を患っている
続いて、歯髄炎を患っていることが原因だと考えられます。
歯髄炎とは、歯の中心にある「歯髄」という部位に細菌が侵入したり、歯に強い力がかかったりして歯の内部が炎症を起こす病気です。歯周炎と比べると聞き馴染みがないかもしれませんが、歯髄炎も矯正治療中に起こる可能性がある痛みの原因のひとつです。
歯髄炎になると、歯の神経にしみるような痛みが生じます。症状が軽いときには冷たいものを口にした際のみに痛みを感じますが、症状が進行するにつれ、温かいものを口にしたときや何も食べていないときにも痛みが生じるようになります。
歯髄炎は、虫歯を放置したことが原因で発症するケースがほとんどです。虫歯によって歯の表面にあるエナメル質に穴が開き、歯髄まで細菌が入り込むと発症します。
裏側矯正の痛みはいつまで続く?
裏側矯正による歯の痛みは、主に矯正を始めた初期に起こりやすくなっています。
具体的には、器具を取り付けた2〜3日目ごろがもっとも痛みを感じやすくなるでしょう。2〜3日目を過ぎたあとには少しずつ痛みが引いていき、1週間程度で痛みはなくなります。
歯ではなく舌や口内に生じる痛みは、治まるまでに上記よりも時間がかかるケースがあります。具体的には、1ヶ月ほど経てば粘膜が刺激に慣れてほとんど痛みを感じなくなるでしょう。
裏側矯正を行っている間ずっと痛みが続くということは、通常ほとんどあり得ません。もし上記の期間を過ぎても痛みが続く場合、虫歯や歯周病、器具の不具合といった別の原因を引き起こしている可能性があります。
痛みが長く続く場合は、歯科医師に相談するようにしましょう。
まとめ
歯列矯正による歯の痛みは、治療中ずっと続くわけではありません。矯正を始めて2〜3日目がピークで、その後は次第に治まります。
痛みのある期間は、洗口液や生理食塩水による口内洗浄で口内を清潔に保つことや、痛み止めの服用などによって痛みを鎮められるケースがあります。
なお、長期的に痛みが続く場合、歯周炎や歯髄炎といった重度の疾患が起こっている可能性もあります。放っておくとますます症状が進行してしまうため、歯科医院で医師の診察を受けるのがおすすめです。
矯正器具が擦れることによって生じる舌や口内の痛みは、1ヶ月程度で粘膜が刺激に慣れて治まっていく場合がほとんどです。ただし口内に傷が繰り返し付く場合は、ワイヤーが飛び出ている可能性もあります。矯正器具に不具合が出ている疑いがある方は、歯科医院で器具の調整を行ってもらうことをおすすめします。
「大阪オルソ」は女性専用の装置が目立たない歯列矯正専門クリニックです。専門クリニックならではの痛みへの対策を行っており、また急患処置は速やかに対応できる体勢を整えています。安心して裏側矯正を行いたい方は、ぜひ大阪オルソへご相談ください。
著者:谷木俊夫