装置が透明で目立たないため多くの方に選ばれているインビザラインですが、矯正治療の前に抜歯が必要になる場合もあります。抜歯と聞くと痛い、怖いというイメージを抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、適切な対処をすれば大きなトラブルを防ぐことができます。
この記事では、インビザライン治療における抜歯の目的や必要性、抜歯後のケアについて詳しく解説します。
目次
インビザラインで抜歯が必要になる理由
インビザライン治療で抜歯が必要になる理由はさまざまですが、主に以下の2つの理由から抜歯が必要になるケースが多く存在します。
スペース不足による抜歯
重度の叢生など、歯が綺麗に並びきるためのスペースがどうしても足りない場合、抜歯をしてスペースを作り出す必要があります。このようなケースでは、主に小臼歯と呼ばれる前から4番目もしくは5番目の歯を抜くことでスペースを確保します。この抜歯により、矯正治療がスムーズに進行します。
親知らずの抜歯
親知らずは、前から8番目にある一番奥の歯です。4本全て生えそろう人もいれば1本も生えてこない人もいるため、その本数には個人差があります。親知らずがまっすぐに生えていて矯正治療後の歯列に影響を与えないと判断される場合は抜歯をすることなくそのまま矯正治療を行うケースも多くありますが、親知らずが斜めに生えていたり、横向きの状態で歯ぐきの中に埋まっている場合は、矯正治療を始める前に抜歯をします。
抜歯の必要性はどのように判断される?
インビザライン治療の開始前には、パノラマレントゲンや歯科用CTで口腔内の状況を確認し、歯並びや顎の骨の状態を詳細に分析します。そして、どの歯を抜くかが治療計画に基づき慎重に決定されます。治療計画の中で抜歯が避けられない場合でも、抜歯後の治療のメリットを十分に理解することが大切です。
抜歯が必要な場合、治療の目的やメリット、リスクについても説明が行われます。患者様が治療内容に納得したうえで進めることが重要であるため、疑問があれば事前に質問しておくと安心です。
抜歯後の治療の流れ
抜歯が完了したら、インビザライン治療に向けての準備が整います。通常、抜歯から1~2週間ほどの回復期間を経て、インビザラインのマウスピースを装着して矯正治療が開始されます。この期間内は無理をせず安静に過ごし、治癒を促進することが重要です。
抜歯をした箇所が治癒したと判断された後に、いよいよ矯正治療を開始します。抜歯で得られたスペースを活かして歯を動かしていくことで徐々に歯並びや噛み合わせが整い、見た目や機能の改善が実感できるでしょう。
抜歯後の注意点
抜歯後は、口腔内の治癒を促進するためにもいくつかの注意が必要です。適切なケアが治癒を早めるとともに、感染予防にもつながります。丁寧なケアを行いながら、矯正治療のスタートを迎えましょう。
傷口への刺激を避ける
抜歯後の傷口が気になることもあるかもしれませんが、素手や舌で触れることは絶対に避けてください。抜歯直後の傷口は敏感な状態であり、触れると痛みや炎症が起こることがあります。抜歯後の合併症の一つである「ドライソケット」を起こすと、骨が露出した状態になって激しい痛みや発熱などの症状を引き起こすことがあるため、注意が必要です。ドライソケットは下顎の親知らずを抜歯した後に起こりやすいともされているため、親知らずを抜歯した際は特に気をつけましょう。
食事の際の工夫
抜歯直後はまだ局所麻酔が効いている状態であるため、すぐの飲食はできるだけ避けましょう。2~3時間ほど経って口の感覚が戻ってから食事をするのがおすすめです。また、抜歯当日の食事はおかゆやうどんなど柔らかいものを選び、できるだけ反対側で噛むように心がけると、傷口への負担が軽減されます。硬いものや辛いものは避け、消化しやすい食事を摂ることが大切です。
歯磨きの工夫
抜歯した当日は、患部を避けて歯磨きをするようにしましょう。また、口をゆすぐ際に強くぶくぶくうがいをしてしまうと、せっかくの傷口の血餅(血の塊)が剥がれてしまう可能性があります。血餅は傷口の治癒のために必要なものなので、剥がれないようにうがいは優しく行いましょう。
抜歯後のトラブル予防
抜歯後に痛みや腫れが生じることはありますが、通常は数日で症状が改善します。もし長引く場合や強い痛みを感じた際には、歯科医院でのチェックをおすすめします。
痛みや腫れの対処方法
抜歯後の痛みや腫れには個人差がありますが、1~2日後にピークを迎える方が多い傾向にあります。その後、1週間ほどで徐々に回復していくでしょう。麻酔がきれたあとは、歯科医院で処方された痛み止めを服用して、痛みをコントロールしましょう。
異常を感じた際の対応
抜歯後の回復中に異常を感じた場合や、痛みが強いときは感染の可能性も考慮し、早めに歯科医院で相談してください。自己判断せず、専門医に相談することが大切です。
抜歯後の生活習慣で気をつけたいこと
抜歯後の生活習慣では、特に血行に関わる行動に注意が必要です。運動や入浴など、血流が促進される行動は一時的に避けることで、抜歯後の出血や腫れを予防することができます。
激しい運動や入浴を控える
激しい運動や長時間の入浴は血流が促進され、傷口からの出血や腫れが悪化する恐れがあります。抜歯当日は特には安静を心がけ、身体に負担をかけないようにしましょう。
飲酒や喫煙は避ける
飲酒も血流を促し、治癒を遅らせる原因となります。抜歯後は可能な限り控え、回復を優先することが重要です。また、喫煙もできるだけ控えましょう。煙草に含まれるニコチンには毛細血管を収縮させて血液の供給を抑制する働きがあるため、傷口の治癒に影響を及ぼします。
まとめ
いかがでしたでしょうか?インビザラインの治療では、スペースの確保や親知らずの影響などの理由から抜歯が行われることがあります。抜歯後の適切なケアと生活習慣に配慮することは、スムーズに矯正治療に移行するために非常に重要です。抜歯を含む矯正治療の流れについてしっかり理解したうえで、治療を進めていきましょう。
当院では、治療経験豊富な歯科医師が患者様の様々なお悩みに合わせて最適な治療方法をご提案いたします。矯正治療にご興味のある方はぜひお気軽にご相談ください。