今回はブログの中に何回か登場したセットアップモデル(予測模型)について詳しく説明したいと思います。「裏側矯正のデメリット」や「なぜ裏側矯正が難しいのか」というブログを以前書かせていただきましたがこの中に何度かセットアップモデルという言葉が出てきます。裏側からの歯並びの治療にはセットアップモデルが必要不可欠なのです。
歯の形態を普段裏側からみることはあまりないと思いますが、舌で触ってみると、上の前歯の裏側などは表側と違ってかなり凸凹しています。この凸凹がみなさん同じ形ならいいのですが、かなり個人差がありますので、ここへ矯正用のワイヤーを通すための装置を付ける場合、既製品だとどうしてもぴったりと歯に沿うようにはできません。歯の表側は凹凸や傾斜が裏側に比べると少ないため、歯の先端から何ミリというふうに定規のようなもので測りながら装置を付けていくことができるのですが、裏側に同じように装置を付けると、歯の形態によって装置の角度や位置が大きく変わってしまいます。そこで、歯の裏側の理想的な位置に矯正装置を取り付けるためにセットアップモデルを用います。
セットアップモデルとは患者さんのお口の中をスキャンしたデータを元に治療後の歯並びを予測して作った模型のことです。裏側からの治療では予測模型の歯にワイヤーが最もシンプルに入るようにオーダメイドで装置を設計します。
少し話がそれますが治療を始める前にもセットアップモデル(予測模型)を作る場合があります。装置作製用のものとは目的が違い、診断用のセットアップモデルは模型上で歯を並べてみて、しっかりと上下の歯が咬み合うか、歯を抜いて治療をした場合前歯がどれくらい下がるかなどを確認し、治療方針を決定するために用います。学生時代は経験がなく、治療後の歯並びがどうなるか今ほど想像できなかったので、模型上で試行錯誤しながら歯を並べていました。時には抜歯したものと非抜歯のもの、そして抜歯部位を変えたものと、3種類の模型を徹夜で作ったこともあります。今現在はデジタルデータから予測模型を作ることができるようになったので便利な時代になりました。
また話を元に戻しますが、なぜ診断用のセットアップモデルのお話をさせていただいたかというと、この診断用のセットアップモデルと装置製作用のセットアップモデルには大きな違いがあるからです。診断用セットアップモデルが将来予測される歯並びを単純に再現しているのに対し、装置製作用セットアップモデルは実際の歯並びとは少し違う調整を加えています。歯並びの治療を行いますと、ワイヤーのたわみなどにより様々な副作用が起こります。特に裏側からの治療では前歯が内側に傾きやすいといった副作用が起こり易い傾向にあます。前歯が内側に傾くと見た目が不自然で咬み合わせも不安定になります。またいったん前歯が内側に傾いてしまうと元に戻すことが困難です。そうならないようにセットアップモデルを作製する際、前歯を意図的に反らせたり、また治療計画によっては小臼歯(前から4、5番目の歯)や犬歯(3番目の歯)が傾くことが予測される場合には予測される傾きと反対方向に歯を傾けたりします。そういった調整を加えた模型上で装置の位置決めをすることで、歯並びの治療で必ずといっていいほど発生してしまう副作用を減らすことができるのです。
「大阪オルソ」はこれまでの治療経験から一人一人の患者さんの治療計画に応じて副作用を予測し、セットアップモデルに副作用を打ち消すような調整を加えています。この装置製作段階での調整により、治療の仕上がりをより良いものにし、またできる限り治療期間を短縮するように努めています。