先日種子島宇宙センターから打ち上げられた宇宙ステーション補給船「こうのとり」5号機が国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングに成功したとのニュースがありましたよね。私の大学は鹿児島でしたので2006年のロケット打ち上げ時に鹿児島市内からロケットが見みえて感動したことを思い出しました。宇宙ステーションは微小重力、宇宙放射線、広大な視野、高真空、豊富な太陽エネルギーなど、地上とは全く異なる特殊な環境です。この環境を利用して様々な実験を行っているそうです。JAXAのホームページに日本が今行っている実験や今後の展望など詳しく書かれていますのでご興味がある方は覗いてみてください。
これはずいぶん前になりますが、私がおもしろいなと思った宇宙での実験に、1973年にスカイラブ宇宙船で行われた、無重力下で水と油を混ぜるという実験があります。地上ではわずか10秒で分離してしまいますが、無重力状態で10時間経っても分離しないのです。密度の違う物質を混ぜるとき、地上では密度の大きいものが沈み、密度の小さいものが浮いてしまいうまく混ぜることができませんが、無重力なら、密度の違うものもむらなく混ぜることができます。水と油が混ざってしまうなんて不思議ですよね。将来的には違う種類の金属を均一に混ぜ合わせて特殊な合金を作ることができるかもしれないとJAXAのホームページに記載がありました。
歯科用の金属は主に2種類以上の金属を溶融し合金化して使用しています。一種類の金属では十分な機械的性質、化学的性質および物理的性質が得られない場合や、単一金属では取り扱いが難しい金属では合金化することによって好ましい特性だけを引き出すとことができます。例えば虫歯治療の際、奥歯に詰める銀歯は金と銀とパラジウムの合金です。矯正歯科の分野では錆びないステンレス(鉄とクロムの合金)やニッケルチタンのような形状記憶合金、またステンレスとニッケルチタンの中間の性質のチタンモリブテン合金などを用います。ステンレスは歯に取り付けてワイヤーを入れるための装置に、形状記憶合金は治療初期の段階で歯をある程度並べるためのワイヤーに用います。チタンモリブテン合金は歯の段差や傾きなど細かな調節をするためのワイヤーに使用します。形状記憶合金やチタンモリブテン合金のなかった時代には矯正歯科治療はずいぶん痛かったという話をきいたことがあります。材料の進歩によって治療が快適になっているのですね。将来、宇宙で理想的な超合金ができれば、そのワイヤーでもっと簡単に治療が可能になるかもしれません。