矯正治療にはさまざまな選択肢があり、中でも裏側矯正は特に人気のある選択肢の一つです。見た目を気にすることなく歯並びを改善できる裏側矯正ですが、治療中に舌の位置がどのように影響を受けるのか、そして舌の位置が矯正にどのように影響を与えるのかについて詳しくお話しします。
目次
裏側矯正とは?
裏側矯正は歯の裏側に矯正装置を取り付ける治療法で、表側からは装置が見えないため審美的に優れているという点から大変人気があります。裏側矯正のメリットとしては『矯正装置が見えないこと』『虫歯のリスクが少ないこと』『お口の中の怪我をしにくいこと』などが挙げられます。しかし、裏側矯正にはデメリットもあります。その一つが舌の位置と動きへの影響です。裏側に装置があるため、舌が常に装置に触れることになり、違和感や不快感を感じることがあります。
舌の役割と位置の重要性
舌は「話す」「飲み込む」「咀嚼する」など、口腔内で非常に重要な役割が多くあります。舌には正しい位置があり、これらの機能を正常に行うためには舌を正しい位置におくことが不可欠です。また舌の位置は歯並びや顎の発達にも影響を与えます。
正しい舌の位置は『スポット』とも呼ばれ、上顎の前歯のすぐ後ろの口蓋に軽く触れる少しくぼんだ部分です。スポットに舌が常にあることで正しい発音ができ、食べ物を適切に飲み込むことができます。また、歯並びを維持する力が働き矯正治療後の後戻りを防ぐ効果もあります。
裏側矯正と舌の位置の関係
裏側矯正では矯正装置が歯の裏側に取り付けられるため、舌の位置や動きに直接影響を与えます。装置が舌に触れることで舌が装置に押されて正しい位置からずれてしまうことがあります。このような状態が続くと以下のような問題が発生する可能性があります。
発音の問題
裏側矯正の装置が舌に触れることで、発音がしにくくなることがあります。特に、サ行やタ行、ラ行などの発音が難しくなることが報告されています。これは舌が装置に触れることで正しい発音位置がわからなくなってしまうことが原因です。
不快感と痛み
矯正装置が舌に常に触れることで、不快感や痛みを感じることがあります。特に矯正装置が新しく取り付けられた直後や調整後は、舌が擦れて痛みを感じることが多いです。このような痛みは通常数日から数週間で慣れることが多いですが、個人差があります。
食事の困難
舌が矯正装置に触れることで食事中に食べ物が装置に引っかかることがあります。また、舌の位置が変わることで食べ物をうまく咀嚼できなくなることもあります。
舌の疲労
舌が常に矯正装置に触れることで、舌の筋肉が疲労することがあります。舌が正しい位置を維持しようとするために通常よりも多くの力を使うことになり、結果として舌の筋肉が疲れやすくなります。
舌の位置と矯正治療の成功
舌の位置は、裏側矯正治療を成功させるために非常に重要です。舌が正しい位置にあることで歯並びが整いやすくなり、矯正治療後の後戻りを防ぐことができます。舌が正しい位置にない場合、歯並びが乱れやすくなり矯正治療がうまくいかないことがあります。
裏側矯正と舌の位置を改善する方法
裏側矯正治療中に舌の位置を正しく保つためには、舌のエクササイズを行うことが効果的です。
舌のストレッチ
舌を前に突き出し、その後舌を口蓋に押し付けます。この動きを繰り返すことで、舌の筋肉を鍛えることができます。
舌の巻き込み
舌を口の中で巻き込み、その状態を数秒間維持します。このエクササイズは、舌の柔軟性を高めるのに役立ちます。
舌の押し付け
舌を上前歯の裏側に押し付け、その状態を数秒間維持します。このエクササイズは、舌の正しい位置を維持するのに効果的です。
発音練習
舌の位置を意識しながら発音練習を行います。特にサ行、タ行、ラ行の発音を重点的に練習することで、舌の正しい位置を維持しやすくなります。
また、矯正装置が舌に過度な負担をかけている場合は、歯科医師に相談して装置の調整を行うことが重要です。装置の形状や位置を調整することで、舌の不快感を軽減することができます。
裏側矯正と舌の位置の関係を理解することで得られるメリット
治療の成功率の向上
舌の位置を正しく保つことで、矯正治療の成功率が向上します。正しい舌の位置は、歯並びを整える力を助けるため、治療期間を短縮する効果も期待できます。
不快感の軽減
舌の位置を意識して正しく保つことで、装置による不快感を軽減することができます。また、舌のエクササイズや装置の調整を行うことで、さらなる快適さを追求することができます。
後戻りの防止
矯正治療後に歯並びが元に戻ってしまうことを「後戻り」といいます。正しい舌の位置を維持することで治療後の後戻りを防ぐことができ、美しい歯並びを長く保つことができます。
まとめ
裏側矯正は見た目を気にせずに歯並びを整えることができる優れた治療法です。
舌の位置が歯並びに与える影響については十分に理解しておく必要がありますが、裏側矯正は舌の位置が自然と正しい位置に誘導されることが多いという特徴があります。
特に舌突出癖による開口の治療では、裏側矯正装置での歯列矯正が習癖改善に有効です。
発音の問題が生じた場合は、ゆっくり話すように意識することで通常1ヶ月ほどで自然に発音できるようになります。慣れるまでの間は違和感を減らすカバーもあるので、あまりに辛い場合は担当医に相談してみましょう。