受け口(反対咬合)は上下の前歯の噛み合わせが逆転している状態で、下顎の前歯が上顎の前歯よりも前に出ている状態です。この噛み合わせの異常は単なる見た目の問題にとどまらず、噛み合わせの不具合や顎関節に悪影響を与えることがあるため、治療が必要とされます。受け口の原因やその改善方法についてはさまざまな議論がありますが、近年注目されている治療方法の一つに「裏側矯正」があります。裏側矯正は装置が目立たず、見た目を気にすることなく治療が進められることも人気の理由です。
この記事では、裏側矯正が受け口の治療にどのように効果的であるかについて詳しく解説します。
目次
受け口の種類
受け口には、大きく分けて二つのタイプがあります。それぞれ異なる原因で発生し、それに応じた治療方法が必要です。
骨格性の受け口
骨格性の受け口は、下顎の骨が過度に成長することで発生します。このタイプの受け口は、遺伝的な要因や成長期の骨の発達に影響されることが多い傾向にあります。下顎が過剰に発達して上顎に対して前方に突出してしまうため、噛み合わせが逆転するということです。骨格性の受け口は歯の矯正だけでは解決が難しいケースが多く、特に重度の場合には外科的な手術(顎矯正手術)を併用する必要があります。手術と矯正を組み合わせた治療により骨格を正しい位置に修正し、その後歯列を整えるというプロセスが一般的です。
歯槽性の受け口
歯槽性の受け口は、歯の位置や角度の問題で生じます。このタイプは上下の歯の生え方に問題がある、もしくは歯が前方や後方に傾いているために噛み合わせが逆転している状態です。歯槽性の受け口は矯正治療によって改善が可能で、骨格性に比べて治療が比較的容易です。特に、成長期の子どもや軽度の受け口の場合には、歯の位置を調整するだけで改善が見込めます。
受け口によるリスク
受け口を放置すると、いくつかのリスクが生じる可能性があります。以下では、主なリスクについて詳しく解説します。
見た目のコンプレックスになりやすい
受け口は、顔のバランスを崩しやすく、見た目に大きな影響を与えることがあります。特に下顎が突出して見えるため、横顔や笑顔に違和感を生じることが多くなります。そのため多くの人が見た目の問題を気にし、コンプレックスを抱える原因となります。見た目のコンプレックスは自己評価の低下や社交的な場面での自信喪失につながることがあり、精神的な影響を及ぼすことも少なくありません。
食事がしっかり噛めない
受け口で上下の歯が正しく噛み合わない場合は、食べ物をしっかりと噛むことが難しくなります。これにより食事の際に噛み砕く力が不十分となり、消化不良や栄養の吸収不良を引き起こす可能性があります。また、噛み合わせの問題は食事の楽しみを損なう原因にもなり、食欲の低下や食事内容の偏りを招くことがあります。
奥歯や顎に負担がかかる
受け口は噛み合わせが逆転しているため、奥歯や顎に過剰な負担がかかります。これにより顎関節症のリスクが高まり、顎の痛みや頭痛、さらには肩こりや首のこりなど全身にわたる不調を引き起こすことがあります。特に、長期間にわたって受け口を放置すると顎関節に恒久的なダメージを与える可能性があるため、早期の治療が推奨されます。
裏側矯正が受け口の治療に向いている理由
裏側矯正は、特に受け口の治療において多くのメリットを持っています。ここでは、その理由を詳しく解説します。
後ろ方向に歯を動かすのに向いている
受け口の治療では、下顎の前歯を後ろ方向に移動させることが重要です。裏側矯正は歯の裏側に装置を装着するため、効率的に前歯を後方に移動させることができます。この技術は歯槽性の受け口に特に効果的で、歯の自然な動きに沿って治療を進められるでしょう。また、矯正装置が歯の裏側にあるため前歯を後方に動かす力が強く働き、治療期間を短縮できる可能性があります。
装置が目立ちにくい
裏側矯正の最大のメリットの一つは、装置が歯の裏側に取りつけられるためほとんど目立たないことです。これは、特に成人の患者様や人前で話す機会が多い職業の方にとって、大きなメリットでもあります。従来の表側矯正では金属のワイヤーやブラケットが目立つため、治療中に笑顔を控えたり人と話す際に気を使うことが多くなっていました。しかし、裏側矯正ではそのような心配が不要であり、治療中でも他人に気づかれることなく自信を持って日常生活を送ることができます。
多くの症例に対応できる
裏側矯正は、多くの症例に対応できる柔軟性を持っています。歯槽性の受け口はもちろん、軽度から中度の骨格性の受け口に対しても効果を発揮します。また、裏側矯正は患者様お一人おひとりの口腔内の状態に合わせてカスタマイズすることができるため、非常に精密な治療が可能です。歯の移動が難しいケースや複雑な噛み合わせの問題にも対応できるよう、個別の装置を作成したうえで治療を行います。これにより治療結果の精度が高まり、長期的な安定を得ることができます。
装置が口を閉じる妨げにならない
裏側矯正の装置は歯の裏側に配置されるため、口を閉じる際に邪魔になることがありません。これは、特に睡眠時や話す際に快適さを維持するために重要です。従来の表側矯正では装置が唇や頬に当たり、口を閉じるのが難しかったり、話しづらくなることがありました。しかし、裏側矯正ではそのような問題が少なく、日常生活においても自然な口元を保つことができます。また、装置が舌に当たる感覚も最小限に抑えられているため、話す際の違和感も少なく治療中の生活の質を高めることができます。
まとめ
受け口は、見た目や機能面でさまざまなリスクを伴う噛み合わせの問題です。しかし、適切な治療を行うことで、これらの問題は大きく改善される可能性があります。特に、裏側矯正は受け口の治療において非常に有効な選択肢であり、治療中の見た目や快適さを重視した治療も実現できます。
治療を開始する前には専門の歯科医師と十分に相談し、自分の受け口のタイプや症状に最適な治療法を見つけましょう。
当院にはヨーロッパ・世界舌側矯正歯科学会認定医が在籍しており、豊富な経験と精密なデジタルデータをもとに診断や装置の作製を行っています。出っ歯の治療にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。