私は学生時代の前歯の真ん中に隙間があることが気になり、よく指で隙間を閉じようと力をかけていました。しかし何度やっても隙間を閉じることが出来ず、結局は前歯に装置を着けて治したという経験があります。病院に行くことなく自分である程度歯並びを改善することはできないのでしょうか?
私は歯科医なので自分で歯並びを治すなんてとんでもないので止めてくださいと言いたいところですが、小児歯科では自力で歯並びを改善することもあるそうです。ごく限られたケースですが、上の1番目の永久歯出てくる場所が下の前歯より後方になりそうな時、前歯でアイスの棒を噛んでもらうことがあるそうです。アイスの棒を上の前歯の裏側に、そして下の前歯では表側にくるようにして噛むことにより、上の前歯を前方に押し出し、逆に下の前歯を内側に入れる方向へ力がかかりますので、前歯の噛み合わせが反対になってしまうことを防ぐことができるのです。この方法は大人になってからは効果がありません。まだ歯の根ができていない7〜8歳の時期だからこそできる方法です。歯の根が完成すると歯を動かすためには理論上1日12時間以上一定の力を継続してかける必要があります。しかも動かしたい方向へ正確に力をかけないといけませんので指や輪ゴムなどでは難しいでしょう。
大人になってからある程度歯並びや噛み合わせを自力で改善できる可能性があるとすれば悪習癖と呼ばれる癖をやめる方法や、MFTと呼ばれる筋機能療法があります。悪習癖とは舌を上下の前歯の間に入れる癖や指しゃぶりなどのことで、前歯が噛めないオープンバイトや上の前歯が前に反ってしまう出っ歯の原因となります。癖を治すことにより、歯が伸びようとする力や唇の力である程度歯並びや噛み合わせを改善することができます。同様に筋機能療法は唇や舌を鍛えることにより歯を適切な場所へ導きます。ただしこれらの方法は矯正歯科治療と合わせて行う場合がほとんどで、一回崩れてしまった歯並びや噛み合わせはそう簡単には戻すことができません。
歯並びや噛み合わせが悪い場合には必ずその原因があります。歯や顎の骨の大きさ、悪習癖、また鼻炎による口呼吸が原因の場合もあります。まずはご自分の歯並びや噛み合わせの問題点を知ることから始めてはいかがでしょうか?